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文化と伝統が子どもの感性を育む
小松市の子育て環境を探る

2024年11月、私たちは石川県小松市を訪れました。北陸の空の玄関口として知られるこの街―。今回の取材で、ただの通過点ではない、その奥深い魅力を目の当たりにしました。伝統文化と先端技術、豊かな自然と子育てに優しい環境が見事に調和した小松市。ミツケルニッポン編集部は、この街の「文化度の高さ」の原点を探りました。

小松駅近くには、町家づくりの街並みも

お旅まつりと曳山子供歌舞伎がもたらす子育ての価値

小松市を訪れてまず感じたのは、地域の伝統や文化を守りながら、それを次世代へと伝えていこうという、市民の強い意識です。その象徴的な存在が、毎年5月に開催されている「お旅まつり」と、「曳山子供歌舞伎」です。これらには、江戸時代から続く歴史があります。地域の一体感の醸成だけでなく、子どもたちの成長にとっての大きな価値を感じました。

日本の伝統文化に直接触れられる環境

「曳山子供歌舞伎」は、子どもたちがその主役を担います。役者に選ばれた子どもたちは、「お旅まつり」の数カ月前から台詞を覚え、まつりが近くなると師匠とほぼ毎日稽古をしていくそう。曳山の実物が展示されている「こまつ曳山交流館みよっさ」では、その様子の動画も見ることができます。

歌舞伎の衣装に身を包み、白塗りの化粧を施した子どもたちの所作や舞いは本格的で、思わず「本当に、小学生なの?」と驚くほど、大人びた艶っぽさや色気さえ漂っていました。いっぽう、衣装や道具の準備、舞台裏でのサポート、曳山の組み立てや解体は、地域の大人たちが担います。このように、「お旅まつり」と「曳山子供歌舞伎」は、地域全体で支えられていて、伝統文化を未来へ繋いでいく、という市民の強い意志を感じることができるのです。

曳山が市内を巡行する姿や、曳山曳揃えの壮観な光景は、訪れる人々を圧倒します。(お旅まつり)

曳山に施された豪華な装飾や、歌舞伎の美しい衣装などに触れることで、曳山に上がる子どもたちは日本人の美意識への感受性を育みます。また、稽古で身に付けた「礼儀」や「所作」は、大人になっても強い武器になるはずです。こういった「知識」や「経験」は、子どもたちの心に深く根付くので、地元はもちろん、日本文化に対する愛着や誇りを持つことに繋がることも期待できます。小松市で育つ子どもたちが、日本の伝統文化を未来へ紡ぐ担い手になってくれる可能性を感じずにはいられません。

茶道を通じた学びと感性の育み

また、小松市内には、茶道裏千家第十五代家元鵬雲斎千玄室氏が寄贈した茶室『仙叟屋敷ならびに玄庵』があります。この茶室は、市民が気軽に利用できる施設で、茶会をはじめとして、市民や市外・県外の方々に広く活用されています。「忙しい毎日の中で、茶道という日本文化に触れる機会が多いことはありがたいし、子どもたちにとって貴重な経験になると思う」と、市内に住む、小学生のお子さんを育てる母親(40代)。ここでも、茶道を通じ、礼儀作法や日本文化を学ぶだけでなく、豊かな感性を育み、美意識を磨くことができます。

体験型学習の場が充実

このほかにも市内には、子どもたちがさまざまな体験を通じて学べる場所が豊富にあることに驚かされます。

駅に併設された「Komatsu 九」は、地域の伝統や文化に触れながら学べる体験型施設。九谷焼の技術や歴史を豊富な展示物から知ることができ、ワークショップも開催されています。

「Komatsu 九」のギャラリーエリアでは遺跡の出土品も展示

グローバルな建設・鉱山機械メーカー「コマツ」の歴史や様々な技術を知ることができる複合型体験施設「こまつの杜」では、 ミニショベル操作体験や「理科・ものづくり教室」などが開催されており、遊びながら学ぶことができます。「自分の手で何かを作るのは、創造力が芽生えるし、ものづくりの楽しさも教えられる」と話すのは、神奈川県からきた、ご夫婦(共に30代)。県内外からも親子連れが訪れる人気スポットとして親しまれています。

超大型鉱山機械「930E」と「PC4000」

さらに、科学と技術の未来を感じることができる体験型ミュージアム「サイエンスヒルズこまつ」も魅力的。ここでは、子どもたちが楽しく科学に触れ、未来を担う力を育むことができるさまざまな体験が待っていて、子どもだけでなく大人も科学の面白さに引き込まれます。

サイエンスヒルズこまつ

レジャースポットは全国各地にありますが、楽しみながら本質を学ばせ、未来への可能性を広げる場所となっています。

未来を見据えた街づくり

小松市のように文化、自然、教育、そして交通の便まで、暮らしはもちろん、子どもたちが豊かに育つための要素がすべて整っている街というのは、全国を見渡してみても、数少ないかもしれません。

「文化度の高さ」とは、単なる伝統や技術の蓄積ではなく、それらが地域の日常生活や子どもたちの成長に深く根付いていることなのでしょう。未来へと受け継がれる和の心や美意識、そして人と人との温かいつながり。次の世代へと紡がれるその豊かな価値観が、文化度を高めていることもわかりました。

金沢に比べると観光客の数が少ないものの、独特の居心地の良さを覚えるのも小松市の魅力。賑やかな観光地での疲れを感じさせず、穏やかな時間を過ごしてみたい、と思う人には、最適な環境が揃っている街です。

関連リンク:Hello!こまつ

関連リンク:小松市子育て支援課

関連リンク:小松ライフを楽しむ小林さん(ミツケル記事)