雪国の食文化といえば、保存食だとか身体が温まる鍋料理のイメージが先行し、寿司には特別な印象もなかったけれど、今回、青森県の方から紹介されて訪れたのは、青森県庁の近くにあり、地元民に長く愛される寿司の名店「三九鮨」。
創業は昭和50年というから約半世紀もの間、地元民に愛されている寿司店は、雪が積もる青森県庁近くの路地を入ったところにあります。少し古びた看板と暖簾からは、老舗の名店の風情を醸しており、食いしん坊という条件で結成された取材チーム3人の期待値は想像以上に高まっていきました。事前情報では、青森の細巻きで酒が呑める、ということ。美味しい酒が呑みたいがために仕事をしているような私たちにとって、こんな朗報はない。18時、小躍りしながら入った店内には既に客も入っており、私たちは畳の個室に案内されました。
寿司店にありがちな独特の緊張感は無く、すっかり実家に帰った気分で足を伸ばしながらメニュー表を広げると、事前に見ていた情報どおり、筋子、ウニ、サバ、マグロといった品数豊富な細巻きとつまみ、そして地酒の品目が並びます。
青森県民がこよなく愛する筋子、ウニ、サバ、マグロの細巻き
真っ先に注文したのは、青森県民が愛してやまない、筋子巻。
メニュー表の写真よりもインパクトがあったのはそのネタの量です。巻き物なら酢飯の中にネタがあるのが一般的なのに、三九鮨では、そのシャリがほぼ見えない!のです。
なんと太っ腹なこと。寿司店なのに、握りより細巻きを注文する客が多いというのも納得です。シャリが少ないから何本でもいけそうな細巻き。〆めの食事ではなく、完全におかずです。いや、つまみでしょう。
ちなみに青森の筋子は塩で漬けているからさっぱりしているらしく、確かにしょっぱ過ぎない。粒粒も新鮮で素朴な味わいが口に広がります。また、存在を忘れるくらいの酢飯は、口の中でちょうどいいバランスで旨みを受け止めてくれるので、ネタを味わうには絶妙な量だったことがわかりました。
青森の細巻は、かっぱ巻、鉄火巻など一般的なものもありますが、筋子、ウニ、トロサバ、青森の郷土料理でもある、にしんの切り込みといった県民が愛するネタが使われていて、東京では決して見かけない品揃えです。
また、日本酒のつまみに合うというのがこの細巻きの特徴。地酒は、亀吉、田酒、作田など多数揃っており、熱燗で一合ずつ、全種類いただきました。どの地酒も筋子のようなしっかりした味付けの料理をさらっと流してくれるような口あたりで、細巻きと地酒の相性の良さを知ることになりました。
さらに私たちは、細巻はお茶と共にいただく〆の飯という概念はすっかり消え、筋子巻の他にも店を訪れる客のほとんどが注文するという人気のトロサバ巻、天然の生ウニ巻、涙巻と呼ばれるワサビ巻(泣くほどたっぷり)、鉄火巻、など次々と注文しましたが、どれもネタがはみ出そうなほどの贅沢なボリューム。他にも、シャキシャキした歯ごたえのもずくや、生産量全国一位のゴボウの唐揚げ、身欠きニシンなど、青森ならではのおつまみも堪能し、ほろ酔い時間はあっという間に過ぎていきました。
青森の細巻は、他では味わえない地元ならではの寿し店。
今宵私たちは、右手に御猪口、左手に細巻といった粋な楽しみ方を知ってしまいました。再訪必至の名店です。
Information
名称/三九鮨
住所/青森県青森市古川1-20-11
電話/017-723-1148
営業時間/17:00〜23:00LO
定休日 / 日祝