神奈川県横浜市緑区に、但馬牛の品質を受け継ぐブランド牛として通に知られる「太田牛」を扱う焼肉店があるという。しかもカウンター10席のみ、完全予約制という“隠れ家”感に加え、店長は横浜の一流ホテルで腕をふるっていた元バーテンダーとか。気になることの多いその店のプレス限定の試食会があると聞き、焼肉好きを自認するミツケルニッポン編集部がその様子をレポートする。
東急田園都市線の長津田駅からJR横浜線に乗り換えて1駅、新横浜駅から電車で10分ほどの十日市場駅に「ホルモンと酒 変幻自在」はある。あたりは静かな住宅街で自然も豊か。駅から線路沿いを6分ほど歩いた先、昭和を感じさせる長屋のような一角に店を構える。
壁に「北極星」の文字、「スナックローズ」のサインがあるのが「ホルモンと酒 変幻自在」
「外観が変わると思い出も変わってしまう。すべてをアートととらえ、この街の風景としてそのまま残しました」と、あえて外観に手を入れなかった理由を語る店長の山戸健一さん（45）。実は横浜を代表するホテルで20年以上バーテンダーを務めたキャリアの持ち主。「そこからなぜ焼肉店？」という疑問をぶつけてみると、「ホテルの看板ではなく、私自身を目当てにしていただけるようになりたい。うちの料理やお酒を楽しみに来ていただける店をつくりたいと思うようになりました」と答えてくれた。
そう考えると、10席あるカウンター席はバーテンダーとの会話も楽しむバーカウンターのようにも見えてくる!?ではないか。
焼肉店には珍しいポップでカラフルなデザインが目を引く。BGMは田中知之さんがプロデュース
横浜、緑区から神奈川の魅力を発信していきたいと、当たり前のように地産地消にこだわる。例えば野菜は、十日市場を拠点にした都市農業で有名な「佐藤農園」のものが中心。そして、ここでしか食べられないもの、その時期だからこそおいしいものを提供するのがモットーだ。
「佐藤農園」で仕入れたインゲン、そら豆、トマト（フルティカ）、新玉ねぎ、キャベツ
試食会では料理とともにペアリングドリンクが提供された。ひと皿めは「豆腐とザーサイパクチー和え」✕「変幻キール」。ザーサイ、ナンプラー、青唐辛子などちょっとクセのある味わいを和えており胡麻油が薫る。これがスッキリとしたキールとよくあい、バーテン出身の山戸さんの“変幻自在”を体現していた。
「白ワインとカシスで作るキールはフランスで生まれたカクテルで、農業復興につながったエピソードがあります。それにあやかって、ここ緑区・十日市場から発信したものが広く知られていくようにと思いを込めて用意しました」と山戸さん。飲み進めるとサプライズな演出が待っているのも楽しい。
「干豆腐とザーサイパクチー和え」と「変幻キール」
そして、いよいよホルモンと焼肉の登場だ。赤身肉は、兵庫県にある「太田牧場」で独自に生産されている「太田牛」。但馬牛の品質を受け継いだ肉質は、脂はのっているのにバランスが良いためしつこくなく、噛むほどに肉本来の旨味をしっかりと感じられる。うん、これはいくらでも食べられそうなおいしさ。
正肉（赤身肉）にはアルゼンチンのナチュールワインとともに
ホルモンは和牛を中心に厳選し、新鮮で臭みのないものを揃える。「ホルモンが苦手な方にも楽しんでいただきたい」と山戸さん。ホルモンは本来しっかり火を入れたいが、焼き過ぎに注意しながらタイミングを逃さずいただくと、これまで食べてきたホルモンとの違いを感じられるはず。焼き加減が心配な方や会話に集中したいときは、スタッフの方が鉄板焼を焼き上げるようにロースター上の肉を焼いてくれるので声をかけてみるとよいだろう。
「ホルモンDYNA-MIX」にはその日おすすめのホルモンが5〜6種類ほど盛り込まれている
さっぱりと酢ダレでいただくのが「変幻自在」スタイル
サプライズメニューとして、神奈川県の「高座豚」を中心にメニューにない逸品を味わえることも。生産量が少なく希少な「高座豚」は、藤沢にある自農場産豚肉の精肉を販売している「みーとはうすKANEKO」が手がける昔ながらの豚肉だ。サラリと口溶けの良い脂身と小気味いい赤身の歯ごたえは、タダモノでない豚肉の風格を感じるほど。
サプライズメニューより「高座豚 肩ロース」。塩コショウでシンプルに
最後に完全予約制について触れておく。カウンター10席、ロースター5台というプライベート感のある店づくりをしているため予約がおすすめということらしい。ふらりと立ち寄っても、空席があれば案内してもらえるのでご安心を。
状況により、山戸さんのホテル仕込みのカクテルがいただけることも……
ちなみに、一軒目はもちろん、空席があれば二軒目、三軒目のバーとしても利用OKとか。客の好みやニーズにあわせて変幻自在なもてなしで迎えてくれるのも心憎い。