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3万人の人生を好転させてきた「名刺服」とは? スタイリスト霜鳥まき子さんが導く“業績アップの企業ブランディング”

 

NHK『あさイチ』、TBS『ラヴィット!』などさまざまなテレビ番組に出演し、悩める視聴者らを洋服で解決に導き、2024年2月には『週刊文春』での連載コラムを書籍化した『似合う服だけ着ていたい 幸せを呼ぶ「名刺服」の見つけ方』を上梓されたスタイリスト/名刺服プロデューサーの霜鳥まき子さん。彼女が提案する「名刺服」に共感し、イベントを開けば予約は即完売。全国から洋服で人生を変えたい人々が行列を作っているという、その人気の理由を探り、洋服がもつ力を見つめ直してみました。

 

想像を超える熱量で受け入れられた名刺服
変化や誤魔化しの先にたどり着く一着

 

――『似合う服だけ着ていたい 幸せを呼ぶ「名刺服」の見つけ方』の発売記念イベントは盛況だそうですね。

嬉しいですよね。イベントは私の地元の長崎からスタートして、佐賀、福岡、岐阜、名古屋と北上し、東京は麻布台ヒルズで開催し、予定以上の席をご用意いただく場所も。その他に、大丸東京店でトークショーとパーソナルアテンドショッピングサービスのイベントを5日間行いました。30名くらいのお客さまとそれぞれ一緒にショップを回ってスタイリングした売上げは約300万円と、こちらもまた好評で。4月27日(土)・28日(日)にもトークイベント(https://www.daimaru.co.jp/tokyo/topics/campaign-19755.html)がありますが、アテンドショッピング枠は告知から数日で予約枠が埋まってしまいました。

 

――すごい反響ですね。

そうなんです。みなさん「名刺服を選んでください」と前のめりで、中には、15年越しで勇気を出してお申し込みくださった方も。私の想像よりみなさんの熱量がすごいんです。「名刺服」というワードが心にバシっと刺さったようで、唯一無二の1セット、1コーデを選んでほしいという意欲が明確な方ばかりでこちらが驚くほどでした。

 

――みなさん、それぞれの「名刺服」を求めていたわけですね。

そうだと思います。最初に、みなさん口々に「迷走しています」とおっしゃって。その理由は、男性と違って女性は肩書きがころころ変わることにあると思います。女性は「◯◯課の方」「◯◯さんの奥さま」「◯◯ちゃんのお母さん」とか、肩書きが変わる度にリセットして買い物をして、自分で作ったイメージに合わせようと一生懸命になってしまう。そうした変化を経験しているうちに、どんどん分からなくなってしまって迷走し、40、50代あたりで「まずい」と気づく時期が訪れる。なぜかと言うと、肌の質感や体型、装いへの許容が変わってくる頃でもあるので、それまで誤魔化してきたことが誤魔化しきれなくなってしまったり、お子さんが巣立ち再びご自身の人生が戻って来たとき、楽しみ方が分からなくなっているからなんです。そんな方に「名刺服」という言葉がスッと受け入れられたのだと思います。女性のお客さまが多いですが、最近は男性も半数ほどに増えていて意識が変わってきているのを実感していますね。

 

ーー「名刺服」という言葉の説得力を感じます。

時流的にもサステナブルという考えの浸透やコロナ禍を経て、たくさんの服を買う、プチプラの服を買うより、自分らしく、長く大切にできる一枚を持ちたいと考える方が増えたのだと思います。前々から「名刺服」という言葉は使っていて、今回やっと書籍の表紙に入れることができたわけですが、お客さまの思いと時流がちょうど合わさって「そうそう!」と思ってくださったのが“今”なことに、この書籍の運命を感じました。

 

 

プロならではのテクニックを散りばめた名刺服
ファッションを楽しむためのヒント

 

――「名刺服」はどのように見つけていくのですか?

弊社にいらっしゃるお客さまはプロに選んでもらって現状を打破したいと思われているので、提案した服を「着てみます!」と、前向きに受け止めてくださいます。ただ、私には明確に着てほしいものですが、ご本人にとってはチャレンジ服なので、その洋服を着たときの周りのリアクションで最終的な判断をされている気がします。そのため、周りの人にも褒めていただけるものにきちんと落とし込むのが大変ですが、そんな私のスキルを信じてお客さまも挑戦してくださるのだと思います。

 

――霜鳥さんが考える「名刺服」とは、どのような服ですか?

日常の服であり、ちょっと先の未来へ導くような服だと思っています。今似合う服ではなく、「半年後にこういたい、1年後はこうなりたい」という夢を聞かせていただき、そこに向かう服にカラダを入れていただくイメージです。すると、いつの間にか思い描く見え方へと変わっていくので、「もしかして海外赴任したいのかな?」とか「雰囲気が変わってやる気がすごいね」とか、周りの人が気づいて手を差し伸べてくださることがあるかもしれない。「名刺服」は物を言わないコミュニケーションツールなのです。

 

――そんな洋服を見つけていただけるんですね。

この話をするとご自身の顔立ちや体型を心配されるかもしれませんが、装いで、理想の雰囲気になるようコントロールできます。それぞれの「名刺服」を選ぶことができますから安心してください。今回のアテンドショッピングでも、洋服に袖を通していただくとパッとお顔が紅潮して、みるみる表情が変わっていく瞬間があって見ていて本当に嬉しかったです。

 

――アテンドショッピングが叶わない方も多いので、普段の買い物で気をつけたいポイントを教えてください。

まず、「5分の法則」と呼んでいるのですが、試着したら5分間は着たまま過ごすこと。ご自身の目が慣れるまでに時間が必要なんです。試着してすぐの頃は違和感があって、落ち着かないかもしれませんが5分くらい経つと……、「イケるかも!」となっているはず。そして、黄色やピンク、赤などの明るい色にトライする際に、黒色とコーディネートしないこと。黒は無難と思われがちですが、コントラストを強く見せやすく、派手になりがち。代わりにグレーやベージュと合わせてみてください。年齢を重ねて肌や体型に変化を感じたとき、助けてくれるのが洋服であり明るい色です。ショップの店員さんにアドバイスをもらいながら洋服選びを楽しんでみてください。

 

 

業績アップや社風にも影響を及ぼす
スタイリストによる企業ブランディングとは

 

――スタイリストでありながら、企業のブランディングも手がけられているそうですね。

はい、そういった要望も多く、お手伝いしています。個人のスタイリングと異なり社長さまご本人の好みは控えめに、会社のイメージを大切にします。事業内容、コーポレートアイデンティや競合も含めてしっかりと研究して、秘書の方や管理職の方にもヒアリングをさせていただいてから提案をすることが多いです。

例えば、ある会社のケースですが、男性社長の髪型がずっと気になっていたんです。契約が決まってすぐ、「美容院同行サービスがあるので、こういう髪型に変えましょう」と一緒に美容院へ。その結果、アパレル関係の取引先から「格好いい!」と好評で、そこから仕事の話に広がりができたそうです。聡明なやり手若手社長というだけでなく、お洒落の話もできるのかもと思わせ、業務や取材内容の幅が増えたのはこちらの作戦勝ちだと自負しています。

 

――ほかにはどのような取り組みをされていますか?

社内の服装マニュアルを作成したこともあります。オフィスカジュアルと言っても、それぞれに解釈が異なるため、ラフすぎてだらしなく見えたり、ときには露出が多すぎる人がいることも。それを社内で指摘するとハラスメントなど問題になってしまうこともあるので、第三者である私がルールを明確にさせていただきました。

私自身、身を持って経験したことですが、JALで国際線CAとして勤務していた頃は、制服に身を包んでいるだけで羨望のような視線をいただくことがありました。それが、今のように金髪でエッジのきいた洋服を着ていると異物を見るような視線を投げかけられることも。どちらも“私”ですが、見られ方が同じ人間でもこんなに違うということと、逆にそれを戦略・武器として使えば、どんな見え方にも変貌できるということがわかり「理想のCA」「理想のスタイリスト」という「衣装」を着て、それに見合う自分になるというのは、理想の自分に近づき、それが周りに伝わり、物事がスムーズに動く近道だと思っています。

 

――ビジネスシーンでは、カタチから入る洋服の力がさらに重要な気がしてきました。

そうかもしれませんね。他でお手伝いさせていただいている企業のケースでは、1年に1回、活躍した社員さんに「社長賞」が贈られるのですが、それが弊社のパーソナルスタイリングなんです。弊社と合同で開催するお花見の途中で別室に移動して、受賞者の方のスタイリングからメイクまで一通りコーディネートして再登場していただきます。すると、その変化にみなさん驚かれ「似合う」「いつもそんな洋服で出勤して」と声をかけていただくこともあって。ある意味この方は、会社の広告塔なわけです。この仕事を評価して副賞にしていただけることも嬉しいですし、自分らしい素敵さを手に入れて、照れ臭そうな、でも嬉しそうな、自信に溢れた方を目の当たりにできるのはこの仕事の醍醐味だと思っています。

 

編集後記・まとめ

特に女性の多くは、年齢やライフステージの変化とともにさまざまな肩書きをもつことになります。その変化に順応しようと真面目に洋服選びをするあまり迷走してしまうことも。そんなとき、一つの道すじを示してくれるのがスタイリスト/名刺服プロデューサーである霜鳥まき子さんが提唱する「名刺服」。また企業ブランディングにおいても洋服の存在は大きく、会社の在り方が装いにも滲み出し、共感を生んだり、誠意を伝えるなど、ビジネスを後押しする不可欠な要素なのかもしれません。

※本文内にあります4月27日(土)・28日(日)に開催される大丸東京店でのイベントは、アテンドショッピングは満席ですが、トークショーは先着順で入場することができます。

詳しくはこちら(https://www.daimaru.co.jp/tokyo/topics/campaign-19755.html)。

 

霜鳥 まき子

https://www.spso.jp/

株式会社SPSO代表取締役、スタイリスト/名刺服プロデューサー。株式会社日本航空にて国際線CAとして10年勤務。その間に海外でパーソナルショッパーの仕事に出会い、スタイリストに転向、2006年より現職。洋服のスタイリングだけにとどまらず、自宅のクローゼットチェック、ショッピングやヘアサロンへの同行など、人生に寄り添うトータルプロデュースを行う。また、法人プロデュース・バンタンデザイン研究所講師、洋服・制服のデザインも手がける。著書に『似合う服だけ着ていたい 幸せを呼ぶ「名刺服」の見つけ方』(文藝春秋)、『洋服で得する人、損する人』(大和書房)、などがある。2024年5月より、長崎放送(NBC)の情報番組『Pint』内のファッションシリーズ企画コーナー「霜鳥まき子でございます!(仮)」に出演予定。