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ロボットがキュウリを収穫
JA全農ぐんまとスマート農業を推進、AIを活用したキュウリ収穫ロボットが導入される

JA全農ぐんまが管理する前橋市江木町の園芸作物生産実証農場(以下、実証農場)で、2024年6月から、キュウリ収穫ロボットが1台導入されました。このロボットを提供したのは、AIとロボットを軸に農業DXを推進するAGRIST株式会社(以下AGRIST)です。一般農家に向けたJAとのロボット導入訴求活動は初めての取り組みとのこと。

なお、JA全農ぐんまでは「スマート農業」分野への先駆的取り組みとして、県内農家への訴求活動を進めていくということです。

実証農場で働く、キュウリ収穫ロボット

ロボットを導入した経緯は、農業従事者の減少と高齢化と社会情勢によって、農業分野においても労働力不足が深刻化しているという背景が挙げられます。一方で、農地の集約も進んでおり、従来よりも効率的な生産が求められるようになりました。特に、群馬県の主力品目のひとつである「キュウリ」の生産現場では、収穫は手作業でおこなわれており、夏場の高温も含め労働環境の改善は大きな現場課題のひとつとなっています。こうしたことから、JA全農ぐんまは群馬県が農業の様々な課題解決を目的にスタートアップ企業との連携を進めている「ぐんまAgri×NETSUGEN共創事業」を活用し、AGRISTが開発したキュウリ自動収穫ロボットを実証導入することになりました。

実証農場のキュウリ

JA全農ぐんまの実証農場では平成28年11月の設置当初から「キュウリ」の試験栽培を行っています。「キュウリ」はJA全農ぐんまの取扱いにおいて年間100億円を超える販売高を有する主力品目であり、品目別では「キャベツ」に次いで上位2番目に位置しています。なお、実証農場では、反収向上を目標とした設立当初の取り組みから、資材高といった直近の生産現場の情勢を踏まえ、生産性の向上といった視点での実証課題の設定にシフトしています。

また、群馬県内の生産者へ大きなインパクトを与える独自の取り組みとしては、「群馬県仕様ハウスでの導入効果の確認」「県内生産者への実証現場の開放(視察受け入れ)」も行っています。

実証農場では、視察の受け入れも行う

AGRISTのキュウリ収穫ロボットの特徴はレール走行式で移動し、カメラで作物を認識してAIが大きさを判断し、自動で収穫します。また、ネット環境を整えることで、PCやスマートフォンから収穫範囲や収穫閾値の設定、通知、遠隔操作が可能です。

<「キュウリ収穫ロボット」概要>
・サイズ W1,110×D680×H1,520mm
・稼働時間 0.3個/分 ※環境に依存する
・移動スピード 100m/30~45分
・1日の収穫量200本/10時間 ※環境に依存する
・連続稼働時間 バッテリー式、約10時間 (ただし畝間移動は手動)

ロボットの性能の効果発揮や、栽培の効率化のため、導入できるハウスには一部条件を設けています。ロボット導入条件については下記の通りです。

・施設園芸ハウスでつる下ろし栽培を行っていること
・ロボットの通信用のネットワーク回線を整えられること(4G LTEの電波が入ること)
・レールが設置してあり、地面が平らであること
・畝から出た後の通路が平らであること(コンクリート)
・つる下ろしの主枝がベッド横に綺麗にまとめられていること
・ロボットがハウス内にある状態でのミスト(薬散)、硫黄燻煙は行わないこと

収穫ロボットが走るレール

なお、AGRISTは今回の取り組みを通じて、収益性の高い経営モデルの検証を行います。大規模な経営体では出荷のピーク時に人手不足で収穫作業に追われるため、他の管理作業に時間や手間をかけられず、『収量』や『品質』に悪影響が出るという課題があります。こうした経営体には、AGRISTのロボットの導入が有益であるとしています。

そして、ロボットの導入により労働力を補完し、労働環境の改善を図ることで、生産性向上を目指しています。また、実証農場での効果確認を経て、県内生産者にロボット導入訴求活動を行って行くとのことです。

今回の導入により、生産コストの増加や労働力不足の課題に加え、最近の異常な夏の高温で作業者のハウス内での活動時間が限られる問題をロボットのサポートで解消できると考え、AGRISTは、JA全農ぐんまとの取り組みをロールモデルに、全国へキュウリ収穫ロボットを普及させていくとのことです。

AGRISTのエンジニア統括最高責任者・清水秀樹氏は、「キュウリ収穫ロボットの導入を通じて、農業従事者の減少と高齢化による人手不足の解決と労働環境の改善にも繋がる」と話します。

今後も、より多くの農業現場に私たちのロボットを普及させるべく、技術の向上と導入支援に全力を尽くして参ります。AGRISTの技術が農業の未来を切り拓く一助となることを願い、引き続き精進していきたいと考えています。

また、プロダクトリーダー・増渕武氏によると、「これまでは大規模園芸施設に導入しやすいように開発を行ってきたが、ロボットの普及のためには大多数を占める一般農家への導入も重要」といいます。

スマート農業の発展に伴い、一般農家での収穫ロボットの活躍が、新しい農業の形になるかもしれません。

公式ウェブサイト:https://agrist.com/